ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番収集記R

様々なピアニストによるラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」の録音を収集。聴き込んだ上で、独自の基準により採点、ランキングし、それを公開するサイトです

21位:エレシュコ

エレシュコのラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番。プロバトロフ指揮、ソビエト国立交響楽団。とにかく、 「希代の奇演」との評判に引かれ、怖いもの見たさもあって、中古購入。全集ということで、1番~4番&パガニーニ。89年のデジタル録音で、音質は上々。特にオケに対するピアノの音のバランスが良く、かなり好きな録音。

感想としては、もうとにかく独創的。速く弾くべきところを遅く、強く弾くべきところを弱く(それぞれの逆しかり)と、徹底した天の邪鬼っぷり。

で、最もビックリしたのが、1楽章カデンツァ。ossiaということで、雄大に始まる前半部は、とりたてて個性はなく型どおりですが、後半部は圧巻。グワングワン、ものすごくテンポを揺らす揺らす。これまで聴いてきたなかで、本盤ほど自在にスピードのアップ&ダウンを繰り返すossiaは初めて。いい意味でも悪い意味でも断然ナンバーワン。

また、2楽章は中間部。ここは、大概テクニックを誇示し速く弾くところ、当然"天の邪鬼"エレシコは超スローで、一音一音を撫でるように労わるように。もう、これだけハッキリ&くっきりこの部分の音を聴いたのも初めて。

そして3楽章冒頭は、改めてイキナリのペースダウン。例によって、一音一音をクッキリかつ力強く置きにいくので、スピード感はまるでなし。音の強弱も、やっぱり独特で、驚かされます。(そろそろ慣れてきますが)

以上、まとめると、総じて「ゆっくりながら力強く」といった印象ですが、とはいえ、この系統の代表である、ラファエロオロスコ盤などにみられるような、単に「力強いだけ」の雑な演奏ではなく、エレシコは決して雑に聴こえません。

これはやはり、力のみで押す一本調子でないからであり、所々に「遊び」というか、とにかくいたるところに、意外なスピード&意外な強弱という落とし穴があり、聴いててハッとさせられる、いちいち新鮮な驚きがあるからです。

ということで、ラフマニノフ3番の演奏としては全く一般的でなく、完全な異端ですが、「希代の奇演」の評判は、正真正銘ホンモノ。まさに期待通り。正統派ガチガチの、つまらない演奏に飽きたら、こういう演奏もぜひ聴いてみてください。